法務局保管の自筆証書遺言書を作ってみた

令和2年7月10日より、法務局での自筆証書遺言書保管制度が始まりました。
その名のとおり法務局で自筆の遺言書を保管してくれる制度です。

このような大きな制度改正があると、司法書士会で研修会が開催されるのですが、コロナの影響で研修会は開催されず、札幌司法書士会から送られてくる資料を読んでもイマイチわかりません。他の司法書士さん達のHP読んでも「自筆証書遺言書保管制度は、公正証書遺言書に比べてトラブルになりやすいので、お勧めできません!」とばかりで、分かったような分からないような・・・。
多くの人がデメリットを強調しますが、この制度にはこれまでになかったメリットがあります。それは、死亡時、関係者に自動的に通知が行く点です。この制度はいずれ戸籍と連動する事になっており、法務局が自動的に戸籍から情報を取得して、遺言者が指定した人に通知してくれるのです。この制度は公正証書遺言書にはありません。


我々専門家にいざという時の事を依頼する方法もあるのですが、数年後、数十年後に依頼した専門家の事務所が存続している保証がないため確実ではありません。
そして、一人暮らしで身寄りの無い方の中には、自分が死亡した時に確実に誰かに知らせて欲しいと思う方もいるはずです。そういった方にとって、この通知制度は良い制度だと思います。


さて、自分は今のところ身寄りが無いわけではないのですが百聞は一見に如かず!という事で、自ら制度を利用してみました。 

この制度は完全予約制。いきなり法務局に行っても相談だけで帰されますので、まず法務局のホームページから予約をしました。
 予約の取れた日時に、予め書いた申請書、遺言書、住民票、手数料(現時点では3900円)などを揃えて持参します。私の場合、申請書に不備があったので、まずその場で書き直し。遺言書についてはその場で書き直しさせてくれるとの事でした。 

ためしに法務局の担当者に遺言の内容に関する話をしてみたところ、やはり「内容については相談できない」との事。(後で、他の司法書士さんと情報交換したところ、どこまで相談に応じてくれるかは、担当者によって少々異なるようです)
「遺言書の書き直しは出来るけど、内容については一切相談できない。」これが、専門家が声を揃えて制度をお勧めしない理由なんだと思います。書き方によってはせっかく作っても無効になってしまうからです。
 そういえば、法務局が確認したのは申請人の住所氏名だけ。貰う人の氏名や生年月日、財産目録の内容などについてはノータッチでした。(※ここを間違うと無効になってしまうのでとても重要!)
 自分でやってみた感想としましては、遺言内容を弁護士や司法書士などの専門家と一緒になって無効にならないよう検討した上で利用するなら良い制度ではないかと思いました。そしてやはり、自分が死亡した際に確実に誰かに通知して欲しい方には、良い制度だと思います。

(手続き後にもらえる保管証)

2023年05月26日